ミュージカル大好き人間として、これまでの記事では2024年中に上演されているオススメ作品をいくつかご紹介しました。で、3歳からミュージカル観劇をしている筆者は結局どれがお気に入りなのか?勝手にランキング作っちゃいます。
老若男女問わずミュージカルファンが増えてほしい!という願いを込めて。様々な視点から様々な作品をご紹介しています。ぜひ最後までご覧いただき、お気に入り作品を見つけてください!
全人類に全力でオススメしたいミュージカル!5選
第1位 天使にラブ・ソングを ~Sister Act~
ハッピーすぎる!元気になるならこれ!日本語版、英語版どっちもいいよ。
初めての観劇にも超オススメ。アメリカの音楽や文化が好きな方にもGood。同名の大ヒット映画をミュージカル化した作品。
映画に使われた曲は一切無いが、代わりにディズニー楽曲を数多く手掛けるアラン・メンケンが全曲書き下ろし。1970年代のフィラデルフィアで流行ったディスコ音楽(フィリー・ソウルといいます)と、心を打つ壮大な芝居歌が共存する。
物語はコメディを残しつつ大きく脚色。デロリスを含めた様々な登場人物たちの成長物語が感動的。自分のライフステージごとに共感できるキャラがきっといるはず。
筆者は2014年の初演から10年にわたって5回の再演を重ねる日本語版とウェストエンド版を合計12回観劇(!)。毎回必ず1回は泣く前提だが、年齢ごとに泣くシーンが違う。一生に1回は見てほしいイチ押し。
*ここだけでは全然語り尽くせないため、詳細を別記事にしていますので是非どうぞ。
第2位 チェス
超難解な社会派作品。そのぶん中毒性も高いから気をつけろ。
日本語版での上演はまず、『Chess in Concert』としてコンサート・バージョンが2度(2012,2013)。
その大ヒットを受けて『Chess The Musical』と題したミュージカル・バージョンが1度(2015)。
その後キャストを替え、英語版でのミュージカル・バージョンが1度(2020)。
日本語訳を手掛けた脚本家・演出家の荻田浩一さんに心から拍手を送りたい。
チェスの世界チャンピオンを決める大会で繰り広げられる、アメリカと旧ソ連の政治闘争。そこへ、敵国同士でありながら愛し合い、亡命を決意する恋人たちの展開が絡み合う。祖国とは?愛とは?涙を流しながら懸命に生きる人々を嘲笑うように、戦争は続いていく。
旧ソ連のチェス・チャンピオン、アナトリーが歌う「アンセム」は圧巻(絶対に日本語の方がいい)。祖国への鬱屈した思いと裏切りの罪深さ、それでも捨てられない愛しい大地と人々へ思いは、涙なしには聞けない。
1度の観劇だけでは理解が追い付かないほど難解な展開なので完全に上級者向け。東西冷戦の知識がないと「はて?たかがチェスで何をそんなに深刻に争っているんだ?」となるので近代史の予習が必要。ただしハマるともう抜けられない。歴史好きにはたまらない社会派の物語。
第3位 レ・ミゼラブル
ミュージカルファンを名乗るなら、これを観ろ。日本語版が断然いい。
難解なので入門編には不向きだが初中級者向け。映画で見た方も多いかもしれないが、ご存じヴィクトル・ユーゴーの傑作長編小説のミュージカル化。人々の群像劇と激動の近代フランスを舞台にした物語は、様々な人の様々な形の愛を讃えるもの。
全編が歌で構成され、基本的に台詞はない。いろんな楽曲のフレーズがいろんな場面で断片的に、効果的に使われる技術に注目してほしい。
この作品のオリジナルは、なんとフランス語。作詞家アラン・ブーブリルと作曲家クロード・ミッシェル・シェーンベルクというフランス人コンビが原曲を作り、英語版は翻訳されたもの。
実は留学先で翻訳を学んだ筆者はロンドンで英語版を観劇したが、日本語版の方が圧倒的にリズムが良くて驚愕した。日本語の訳詞を書かれた岩谷時子先生万歳。
第4位 Wicked(ウィキッド)
特に女性にオススメするならこれがNo.1。
映画『オズの魔法使い』に登場する「西の悪い魔女」エルファバと「南の良い魔女」グリンダの過去を描いた同名小説のミュージカル化。2人はなぜ「悪い魔女」「良い魔女」となったのか。最後にはすべてが1本の線でつながる衝撃の物語。
映画に出てくる「西の悪い魔女」といえば緑色の肌だが、これは生まれつき。その理由も描かれる。いつも浮いた存在で、劣等感にさいなまれていたエルファバ。しかし魔法使いの才能を見出され、未来を掴んだはずが…
逆風の中で固く誓い合った友情と、ついに掴んだ愛する人とは。エルファバが1幕ラストで歌う「Defy Gravity」は落ち込んだ心に力をくれる。
日本では劇団四季にて2007年に初演。2024年には映画化され、エルファバを『天使にラブ・ソングを』ロンドン版でデロリスだったシンシア・エリヴォが、グリンダを大人気歌手アリアナ・グランデが演じる。楽しみでならない。
第5位 ロミオとジュリエット
物語に先入観のある人ほど観てほしい。演出が楽しすぎて飛ぶぞ。ぜったい日本語版。
フレンチ・ミュージカルを宝塚歌劇団の小池修一郎さんが日本語版にて演出。宝塚版と男女混合の東宝版があるのでお好みで。
筆者が観劇したのは東宝版だが、まず時代設定が2040年の近未来。スマホも出てくるのでビックリするが非常に効果的で、膝を打つこと間違いなし。それに伴い音楽も現代的。クラシックぽい曲は全然出てこない…う~んパリス伯爵だけちょっとクラシカル?
物語が有名な分、途中経過が面白くミュージカル初心者もとっつきやすい。
若者たちはとにかくパワーに溢れ、歌って踊って恋して夢を見る。『ロミジュリ』の20世紀版と呼ばれる『ウェストサイドストーリー』に、『ロミジュリ』の方がグッと寄っているから楽しい。そこにロミオとジュリエットの両親、ロレンス神父、ヴェローナ大公など大人たちがガッチリと脇を固める安心感。
ミュージカル観劇初心者にオススメの作品 3選
入門編としては、まあまず『天使にラブ・ソングを』『ロミオとジュリエット』があれば安心。しかしもう少し高度な歌の掛け合いや技術を楽しむレベルへと進化する前に、こちらも押さえておきたい。
スカーレット・ピンパーネル
バロネス・オルツィ著の同名小説をミュージカル化。ロベスピエールによる恐怖政治が敷かれているフランス革命期。次々と処刑されるフランス貴族を救うため、イギリス貴族の同志たちが立ち上がる。
ブロードウェイの凄腕作曲家フランク・ワイルドホーンが全曲書き下ろし。物語はツッコミどころ満載で、めちゃくちゃ曲がいい。
美女と野獣
言わずと知れたディズニーの名作。アニメでは見られない、舞台ならではの歌とダンスが最高で、「Be Our Guest」とガストンの酒場のシーンは必見。曲の豪華さは説明不要だが、生の歌を劇場で聴くと感動もひとしお。
キャッツ
これも映画で見た方が多いかもしれないが、絶対に舞台版がオススメ。というか、全然違う。映像技術を使わない分、セットと俳優の表現力と身体能力だけで作り上げる猫らしさは唸るほど完成度が高い。
ミュージカル観劇中級者にオススメの作品 3選
『レ・ミゼラブル』と難解さは同列。分かりやすい音楽、知っている物語を卒業したら、こちらに挑戦してほしい。
マイ・フェア・レディ
オードリー・ヘップバーン主演の同名ミュージカル映画も有名だが、舞台版もクラシックといえるくらい歴史が長い。日本語訳も技術が凝らされているが、英語という言語にまつわる話題なので是非とも英語で観てほしい。
あらすじもイギリス文化を色濃く反映しているので日本人には少々なじみが薄い。ミュージカルとしては珍しいタイプの物語かもしれないが、ヒロインのイライザが大きく成長していく様が気持ちいい。
ジキル&ハイド
イギリスの作家ロバート・ルイス・スティーヴンソンの小説「ジキル博士とハイド氏」をもとにしたブロードウェイミュージカル。上述『スカーレット・ピンパーネル』を手掛けた作曲家フランク・ワイルドホーンが初めて書いたミュージカル作品。
日本では2001年から今に至るまで何度も再演を繰り返している。正義とは何かを追求した男の悲劇。
エリザベート
ウィーン・ミュージカルの大傑作。ハプスブルク帝国最後の王妃エリザベートの人生をファンタジックに描く。死神に愛された少女が波乱の人生を歩み、まるで呪われたように周りの人々も帝国も滅んでいく。
曲の尖り方が東欧らしいというか、ほかでは聞けない特徴がある。15歳から60歳までのエリザベートの変貌がすさまじい。
ミュージカル観劇上級者にオススメの作品 2選
これはきっと賛否分かれるはずだが、筆者が『チェス』以外に面白いと思えた難解作品を。
天翔ける風に
はい、初めて日本オリジナルミュージカルが来ました(泣)。ドストエフスキーの『罪と罰』を日本の幕末に置き換えた衝撃作。謝珠江の演出で激しい「ええじゃないか」ダンスや貧民たちの歌が見応えたっぷり。ヒロインが抱える罪と償いは悲しく、坂本龍馬の燃え上がる熱い志はカッコ良すぎる。
RENT
HIV、LGBT、貧困。アメリカの若者が抱える社会問題を集合させたような作品。これもほとんど全編が歌で、展開スピードも速い。
これを日本の高校生に見せたところ、最初は疑いの目で見ていた彼らが最後のシーンに近づくにつれ号泣した。
名曲「Seasons of Love」のように刹那的な人生を精いっぱい生きる登場人物たちが愛しくてたまらない。
SMOKE
お初の韓国ミュージカル。日本でも2018年から5回上演されている。日本統治下の韓国に生きた韓国人の詩人、李箱(イ・サン)の物語なので、物語そのものの評価は分かれるかも知れない。
しかし最大の魅力は曲の素晴らしさ。これはもう「東洋同士のフィーリングだから」と言わざるを得ないと思う。心の琴線に触れる美しい旋律がなんとも耳に心地よい。
最後に
皆様からのオススメも是非お寄せください。楽しい観劇ライフを!
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