「美女と野獣」【舞台版】生身の人間がCGなしで演じ、歌い、踊る魅力!

舞浜アンフィシアターで上演中の劇団四季ミュージカル『美女と野獣』を語りまくるシリーズ第2弾。この記事では舞台版の音楽の魅力を。

映画ならアニメやCGでどうとでもなる魔法の世界、生身の人間が演じる舞台ではどうやって作り出すのか。カギは歌とダンスの優れた技術にあり!生身の人間だからこその温もりと、目の前で繰り広げられる夢の舞台はやみつき必至。

これから観劇予定の方はどうぞ予習にお使いください。すでに観劇された方も是非あなたのご感想を教えてください。後半にはマニアックなお気に入り曲もご紹介します。お楽しみに!

醍醐味は歌とダンス!この華やかさは映像で絶対出せない

お城のキャラクターたちが可愛すぎる

魔法と夢と音楽にあふれたお城。ここで主人の野獣と共に暮らす召使いたちはみんな家具で、みんな人間が衣裳を着て演じている。個性豊かに歌って踊ってカワイイったらありゃしない。

お城キャラたちの見せ場は2つほどあるが、なにはともあれ「Be Our Guest」が最高の名場面。ルミエールがベルをもてなすためキッチンを総動員し、手にはステッキとハートマークのついた帽子を。

いかん。彼の笑顔を見ているともう気分は自分もベルになってディナーの席についているよう。しかも食べるためというより、一緒に踊るために。

でもこの曲が流れだすと、今まではシリアスな場面も多く緊張していた客席が、完全に宮殿のお客様としてまるごと空間移動し、楽しくもてなされてしまう。

最初の歌を歌っている間にいろいろなキャラクターが登場する。

  • スプーンとナイフにフォーク、お皿、お砂糖。みんな手足の動きに特徴が出ていて個性豊か。
  • お次はダンスで見せるキャラ達。絨毯はアクロバティックな踊りでヒラヒラと宙返りしたかと思えばベタ~ンと地面に伸び、次の瞬間にはひるがえってクルクル回っている。圧巻。
  • それが終わるやいなやチーズが登場。見事なジャンプターンで舞台を一周する。

これを読んでいる皆様、どうかご観劇の際には絨毯とチーズに盛大な拍手を!

さらにはルミエールの恋人、バベット(箒のレディ)もセクシーな大人の雰囲気でタンゴを踊る。ドレスにはフワフワの羽箒がついており、まっすぐに立っている時も足を動かして羽を揺らめかせている。

ルミエールはずいぶんと恋多き男らしいが、こんな素敵な羽を持った女性ならイチコロでしょ♪

「Be Our Guest」の最後を飾るのはナプキンたちとベルのカンカン。数あるミュージカルの名ダンスシーンでも最高峰の華やかさに違いない。カンカンとは足を高く上げて踊るムーランルージュの定番ダンス。

高等技術でないとできないような迫力満点さは変わらず、でもエロくないようにめっちゃ可愛くしたバージョン。ここから全員が声を合わせ、みんなで踊って曲の最後を飾るまで、心尽くしの「おもてなし」で最高に幸せな気分になれる。

要注目!アニメ版でカットされたお城キャラたちの大合唱

お城キャラたちはお皿やナプキンなどたくさんいるが、アニメ版での見せ場というと「Be Our Guest」とガストン達の襲撃くらいだろうか。

しかし、実はもうひとつの見せ場がある。子供向けのアニメ映画だから時間が長すぎるといけないので泣く泣くカットになったが、ミュージカルではそれが復活。

ベルと野獣が心を段々と開き合い、一緒に本を読む場面にお城キャラの歌が差し込まれてくる。

「この二人が上手く打ち解けて、愛し合ったら、私たちはまた人間に戻れる。なんて素敵なんだろう。人間に戻ったらどんな楽しいことをしようか。当たり前だった生活がどんなに愛しかったことか。また太陽の光を浴びて、お掃除して、たまにはのんびり休んで、ダンスをしよう」

アニメではお城のみんなが、二人のディナーに向けて誇りまみれのお城を隅々まで掃除し、閉ざされていたカーテンを開けて明るい光を入れる映像が流れる。

舞台版ではみんなが集まってルンルン気分のダンスを繰り広げる。

そこに『アーサー王物語』を一緒に読むベルと野獣の後ろ姿が見える。今まで自分一人で抱えていた孤独を分かち合う二人。そして一度は拒否したディナーを一緒にと、野獣にお願いするベル。喜んで受け入れる野獣。

ディナーを最高に幸せな夜に演出し、二人に愛が芽生えれば、きっと人間に戻れる日も近い!みんなの希望が高らかな大合唱になり、美しいワルツに乗せて歌われる。

お城のキャラたちはもともと全員人間だったのに、家具に変えられて長いこと辛い思いをしてきた。しかしこの曲の中で悲しみは微塵も感じさせず、みんなが近いうちに来るはずの未来に向けて目を輝かせている。

本当に幸せと希望に満ちて、ワルツの音と同じくらい心が美しくなりそうな場面。ぜひとも逃さずに味わってほしい。

ガストンたちがビールでどんちゃん騒ぎ!酒場のダンスがやばい

お城キャラは子供も大人も大好きになること間違いなしだが、ガストンたち村のみんなも負けてはいない。上品なお城と逆に、庶民の気軽さでどんちゃん騒ぎする酒場の場面。これがまた、アニメ版の20倍はすごいことになっている。

最初はだいたい同じかなと思いきや、途中から聞いたことのない軽快なリズムに変わると全員がビールのジョッキを両手に持つ。で、整列するや否やジョッキを打ち鳴らして群舞を始める。

これがすごい。雰囲気はあくまでアホで陽気な酔っ払いどものダンス。しかし、しっかり見ているとジョッキの動きや隊列の組み方が複雑極まりない。

振付を覚えるまでに相当苦労するはずだし、慣れるまで練習したとしても頭をフル回転させていないと、一歩間違えたら終わりだ。一度狂えばパニック状態、とても順序についていけない。踊る側の視点に立って考えると恐ろしい「脳トレダンス」。

ビールジョッキだけではない。ここにはガストンとその取り巻きのオモシロが集約されている。まあガストンはお城の襲撃に行く場面でも相当カッコイイ曲を歌っているが、酒場なので「脳みそまで筋肉なアホカッコいい男」を前面に押し出す。

結局この男、ベル一人に愛されたいのではなくて、村の人気者だから村一番の美人を自分のものにしたいだけなのだ。そのアホさ加減がオモロイ。

中でもアニメ版を見た方ならご存じだろうが、街でガストンを取り巻く3人娘がいる。この3人が順番にガストンの上腕二頭筋をつかんで「あ~ん」「い~」「うう~」と痺れる、世界で一番バカなファンっぷりを発揮(爆笑)。

そして忘れてはならないのがガストンの腰巾着、ル・フウ。この作品で一番コメディ要素が強い登場人物だが、とにかく歌が最高。

彼はこの酒場の場面で歌をリードするが、アリアや説明ではなく全編が芝居歌。ガストンをひたすが励まし、いいところを並べ立て、酒場のみんなを巻き込んでいく。ル・フウがガストンの引き立て役だが、彼自身がどんなに優れたムードメーカーかを堪能してほしい。

マニアックな曲を狙うならこれ

舞台版にしかないベルのソロ曲

さて、ここからは登場人物たち個人個人の曲でもマニアックなものに注目したい。アニメ版と映画版には存在しない、舞台版だけの特別な場面である。

ミュージカルの歌には物語を流すための歌、説明の歌などいろいろ役割があるが、中でもたった一瞬の心模様を描くという役割があることを忘れてはいけない。

黙って何かを考えている時、あるいは声を殺して泣いていたり感動していたり、つまり現実なら絶句している最中に頭の中で流れている思考を描く歌がある。

それらは往々にして時間を食うので子供向けのアニメや2時間で収めないといけない映画では使われにくいが、ミュージカルではむしろ名曲中の名曲になれる。

私のイチ押しは第1幕、ベルが野獣の城に閉じ込められたときに歌う歌「Home(我が家)」。

アニメならベルは野獣の城で部屋に通された後、泣いているところにポット夫人がやってくる。その間の心情をより詳しく描くのが舞台版。英語の歌詞をサクッと抄訳してみると分かりやすいだろう。

パパのためにここに残ることを自分で選んだ
でもこんなふうに自由を奪われる筋合いなんてない

怪物め!こんなことが正しいと思うならあんたはバカだ!
これが家ですって?ここで幸せになれと言うの?暗くて冷たいここが?
子供のころから言われていた 家は心の拠り所だと まったくの嘘
私の心も 拠り所となる家も 遥か遠くに去った
こんな悲しい場所で何かいいことを探せと?
この空っぽの場所で?
ここで本当に永遠に暮らさなければいけないの?
いつか必ず出ていく 人生がガラリと変わったならまた変わるはず
高い壁があっても カギを開けてやる
私の何もここには残らない
心は自由 遠い我が家にいる

こんな芯の強さがあるベル、アニメ版だけでは分からない。約束に従って運命を呪うのではなく、いつか必ず出て行ってやると固く決意する歌、苦しい境遇にいる人や理不尽な場所で辛い思いをしたことのある人なら、強く共感できるかもしれない。

究極のマニア曲、悪徳医者の登場シーン

最後にどうしてもご紹介したいのが、アニメ版にもちょこっと出てきた悪役の曲。

ガストンがベルの父モリースを精神病に仕立て、病院にぶち込むために連れて来た医者。この医者、ガストン、ル・フウとともに作戦を練っている怪しげな場面を覚えているだろうか。アニメではすべて台詞だが、なんと舞台版では全て歌っている。

正直このたった一つの場面しかソロパートがないのがもったいないほど、医者を演じる俳優さんは歌がすごい。

上にご紹介したようなベルが泣いているときの心情を描く歌ではなく、物語そのものを歌で流すのがこれ。暗闇をスルリスルリと抜けていく蛇を思わせる半音階。その半音階に合わせて、手の指もゆっくりと動いている。

不気味だ。そしてガストンに金貨の入った袋を手渡されて目がギラっと光るところからは、テンポがだんだんと速く激しくなっていく。ひゃっひゃっひゃと今にも笑い出しそうな高揚感と最後の契約成立で、観客は次に起こる事件を想像しゾッとする。

3人の悪役が、丁々発止の芝居歌で取引する様子に引き込まれる。子供は少し怖いかもしれないが、大人はこういう場面こそ注目してほしい。

最後に

舞台版にしかない『美女と野獣』の魅力の数々をお届けしました。いかがでしたか?舞台を観劇したくなったでしょうか?CGで何でも作れる映画がどんなに頑張っても、生身の人間が目の前で演じる舞台に敵わないものは必ずあります。これだから観劇はやめられないのです。

まだ『美女と野獣』を映像でしか見たことのない方、もったいない!是非とも魔法の世界を舞台で味わってください!

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