『星列車で行こう』あらすじ深読み予想&キャストをご紹介♪

音楽劇『星列車で行こう』。世界初演が京都南座にて上演中!あの歌舞伎役者で最高峰の女形と名高い坂東玉三郎さんが演出を手掛けています。今までも歌舞伎以外に様々なジャンルの舞台芸術を生み出してきましたが、この夏はどんな素敵な銀河を見せてくれるのでしょうか?公式サイトに掲載のあらすじやキャストの紹介文をもとに、物語を深掘りしていきましょう!ご観劇前の予習にどうぞ。

公式サイトに記載のキャスト・日程・チケット情報はこちら

音楽劇 星列車で行こう
演出・補綴:坂東玉三郎
脚本:真山仁
出演:影山拓也 (IMP.)  松田悟志 松村龍之介 石井一孝 他
日程と料金
【京都・南座】
日程:2024年7月27日(土)~8月19日(月)
S席 12,000円  A席  8,500円
【名古屋・御園座】
2024年8月23日(金)~8月26日(月)
S席12,000円  A席8,500円
チケット情報
・ 南座『星列車で行こう』専用ダイヤル 0570-066-007(10:00~17:00)
・チケットWeb松竹(ごめんなさい、リンクは掲載できません。PCやスマホでサクッと検索してみてください)
・御園座はネット予約、クレジット払いのみ。チケットぴあ、イープラスなど各種プレイガイドでどうぞ。

星列車で出会う登場人物たち

太郎(影山拓也)

典型的ないい子ちゃんながら、自分がないことに苦しんで家出してきた青年。星列車に乗って自分探しをしたい。

これ、青年あるあるだ。

周りの大人に気を遣い、人の言うことに従うばかりで自分で判断したことがない。
自分のやりたいことも強みも分からず、ダメ人間に思えてきてしまう。
でも周りからは「いい人」であることを期待されているし、期待に応えたい。

事実いい人には違いないが、息苦しい。でも自分を解放したらどうなるか分からなくて怖い。でも思い切ってやってみたい。この星列車なら本当の自分を見つけられるかも…!そんな、「でも、でも、でも」と自問自答を繰り返す青年とみた。

『天使にラブ・ソングを』のシスター・メアリー・ロバートに似ている。星列車で宇宙の広さを知り、様々な乗客と出会うことで何かを学べるだろうということだけは分かるようだ。

元ジャニーズのタレント・俳優・歌手の影山拓也さんが初めての単独主演に挑むのがこの作品。ジュニア時代から『滝沢歌舞伎』に出演し、その後も『いまを生きる』など舞台作品やドラマなどに出演、今もアイドルグループIMP.のリーダーを務めている。

今回、坂東玉三郎さんに見出された彼はどんな歌声と演技を見せてくれるだろうか。

次郎(松田悟志)

孤独にさいなまれた過去があり、お金とスマホにしか幸福感を見出せない。注目を集めたくてお金持ちになろうと闇バイトに手を出し、逃亡中に星列車へ迷い込んできた。

孤独な過去というのが興味深い。よほど愛に飢えた幼少時代を送ったと見える。孤独がトラウマになったゆえの承認欲求強めなマテリアル・ボーイ。

お金にも執着があるなら、貧乏も経験したのかもしれない。お金持ちになって悪友と豪遊し、女遊びをし、その動画をネットに上げて「いいね」をもらったり羨ましがられたりしたい。こんな感じだろうか。ただ、闇バイトに騙されるくらい思慮も浅い。

考え方や失敗を見る限り、貧困や孤独が理不尽と思いながらも、自分を磨いて脱却しようという努力はできなかったようだ。努力できる人間なら、闇バイトなんかに簡単に騙されないだろうから。

そんな次郎を演じるのは、今年で芸能生活25周年の松田悟志さん。元仮面ライダー俳優さんの45歳。その松田さんが20代の青年役を演じるのが「舞台の面白いところ」とインタビューで語っている。

数えきれないほど様々なドラマや映画に出演経験があるが、なんと芸術短大ご出身。絵がお上手で、絵画教室の先生もされているとのこと。

インタビューに興味深いエピソードがあった。幼少期にお留守番の寂しさを紛らわすために絵を描いていたというのだ。なるほど、この背景が役に生かされた設定なのかもしれない。また、坂東玉三郎さんとは共演経験があるとのこと。信頼されて選ばれた人材だ。

五郎(松村龍之介)

歌舞伎俳優への夢破れて星列車に来た。着衣も言葉もなんだか歌舞伎風。物語の主人公のように、誰かに頼られる人になりたい。

夢が叶わなかったという落胆を抱えて宇宙を旅しに来る気持ち、多くの人が共感できる設定ではないだろうか。就職試験や恋愛、コンクールで敗れた時など、いったん全部忘れて遠くに旅したくなるものだ。

しかし歌舞伎が体に染み込んでしまった様子からして、夢破れたあとの旅が新しい出発点になりはしないだろうか。

坂東玉三郎さんのご専門、歌舞伎が活かされる役。松村龍之介さんの出演作品を観る限り、舞台は『刀剣乱舞』はじめ戦国ものや日本の武将たちを描いた作品が数多い。歌舞伎風のたたずまいはピッタリだ。

星列車のような宇宙を旅する列車に関わりがあって、誰かに頼られる主人公。日本人ならピンと来るはずだ。しかも、松村さんのご出身はなんと、その名作童話を生んだ作家とドンピシャで同じ。この人のために書かれた役と言っていいくらい。

車掌(石井一孝)

「夢を見つけられる」という伝説がある星列車の車掌。額にケータイの光を当てて乗車確認をする。

おでこに光!なんとも想像力が膨らむ仕草だ。まるで脳の中に何を抱え込んでいるのか、光を当てて見透かしているよう。人生で数多くの経験をしてきた車掌が、若者たちを導きながら何を語るのか。

そもそも宇宙を旅する列車で働くなんてもう、普通の寿命ある人間ではなさそう。彼の正体はなんなのか、どこから来たか、どうして星列車の車掌になったのか。若者のエピソードだけでなく車掌さんの背景にも物語で触れられていたらいいな。

若者たちを導くのは、俳優&シンガーソングライターとして32年の経歴をもつ石井一孝さん。プリンシパルキャストで演じたミュージカルは枚挙にいとまがない。
最近は『フラワー・ドラム・ソング』と『イザボー』で息子がいる父親を演じたが、温かさや物事を深く長い目線でとらえる貫禄があり、いるだけで舞台の空気感が濃くなる。

坂東玉三郎さんはなんと、石井さんが20代で演じていた『レ・ミゼラブル』のマリウス役をご覧になっており、今回の出演依頼に至ったとのこと。石井さんのSNSには坂東さんの演出の素晴らしさが語られているが、20年越しの邂逅はどんな化学反応を完成させるのか。楽しみで仕方ない。

石井一孝さんにかんしては他の記事で人物像を詳しくご紹介しています。是非ご覧ください!

あらすじを読み解く

駅名が示唆に富む

「将来駅」、「追憶駅」、「夢見る駅」と、途中停車の駅名がすでに公式サイトに載っている。好奇心をくすぐる面白い名前だ。「将来」と「夢」が別々の駅なのが、また的を得ている。

夢と現実の乖離は若者の誰もが苦しむことだ。若者と言ってもティーンだけではない。いくつになっても夢を追っている限り、つきまとう現実と戦っているのなら誰でも若者といえると思う。

だがこの作品に関しては20代の青年たちが立ち止まる駅だから、20代ならではの悩みがたくさん反映されていることだろう。たとえば初めての就職。やりたいことがあるのに才能や適性がどうしても合わないことはある。やりたいことと、できることとは違う。

そういう状況で、興味は決してないけれどその時の自分を認めてくれた仕事にまずはついてみるか。それともすべてを蹴って、バイトしながら親の脛かじりながらヒモになりながら、叶うかどうか保証のない夢を追うか。

どちらにしても歯を食いしばって耐え凌ぎ、回り道しても自分を磨きながら、虎視眈々とチャンスに向けて準備を進めることができるか。そんな問いかけをしてくれるのでは?

「追憶」は過去を背負った次郎や夢を追ってきた五郎なんかが活躍しそうな駅。ここに至るまでの人生を見て、克服すべき自分の弱みを見つけることができるかもしれない。

あのとき何を考えたか、なぜそうなったか、どうすればよかったか、航路を振り返りながら前に進むことは大切だ。

今の自分が過去と未来を巡るあたり、『クリスマス・キャロル』に少し似ている。クリスマス大嫌いな守銭奴のスクルージが精霊に導かれ、「今の自分はあの時なりたかった自分か」「これから何をすれば、なりたかった自分へと変われるのか」を見つけていく。

星列車では精霊の代わりに謎めいた車掌が導いてくれるようだ。やはり車掌さんの正体、気になるところだ。

これまで描かれてきた、宇宙を走る「星列車」の先達

星列車という言葉を聞けば、日本人の大半は2つの有名な作品を思い浮かべることだろう。
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』。そう、五郎が憧れていると考えられる物語。
そして松本零士の『銀河鉄道999』シリーズ。

『銀河鉄道の夜』は美しい風景を思い浮かべ、ウットリしながら読み、最後には衝撃の結末で胸を詰まらせる。自分が突然行かなければならなくなった場所を、たった一人の友達に見せたカンパネルラ。震えながら、「お母様は許してくださるだろうか」と言って消えた少年。

大人になってもなお、少年が選んだことが意味するところを悩み続けなければいけない物語だ。

一方『銀河鉄道999』は、死なない体を求めて旅をしたはずの少年が、死なないことの恐ろしさを発見していく。生身の人間が永遠の命を求めたばかりに、サイボーグに憑りつかれたらどうなるか。

少年と様々な星に住む人との出会いで命の輝きを描いていく。

宇宙は広くて、下から見上げれば美しくて、ロマンがあって、宇宙人という未知の世界に惹かれて、同時に天国やブラックホールといった恐ろしさを持つ。宇宙のどの側面を切り取っても様々なメッセージをくれる。だから作家の想像力が掻き立てられる。

その一つに新しく名を連ねる『星列車で行こう』。日本の伝統芸能、現代劇、海外の芸術、それらが時空を超えて寄り集まる場所だ。

さらに、完全なる新作なのでキャストさんに役を当て書きされている気がする。俳優さん一人一人の持ち味を存分に引き出したキャラクターが見えるかもしれない。まるで星雲のようにキラキラした制作陣とキャストが連れて行ってくれる銀河。

この夏は酷暑の現実をひととき忘れ、彼らと宇宙を旅しよう。

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