「ゴースト&レディ」評判は?海外の反応は?劇団四季の社長が語る「心の羅針盤」

劇団四季オリジナルミュージカル『ゴースト&レディ』東京千秋楽が終わりました。2025年5月からは名古屋、その次は大阪公演も待っています。作品の成長はまだまだこれから。

この記事では、前半で作品に集まった国内外からの反応や評判をご紹介。さらに、劇団四季がどんな思いでこの作品を生んだのか、様々な場所で公開されている社長へのインタビュー動画をまとめます。

ぜひ最後までお楽しみください!

「ゴースト&レディ」国内と海外からの反応

海外からの反応がもっと欲しい!

ミュージカルを観劇した海外からの観客による評価や感想は、残念ながら見つかっていない

理由は簡単だ。日本語が分からない外国人が分かるような体制がなかったから。英語の字幕があれば海外からの観客がもっと来たはずだ。

しかし、宣伝だけは…やっと見つけた(デオン・ド・ボーモン風に)。ブロードウェイ、ウェストエンド、オフ・ブロードウェイの様々な作品を宣伝している海外のウェブサイトTheatre Maniaに、どーんと載っている。

物語のネタバレや劇評は一切なし、プリンシパルキャストや演出家、振付家、イリュージョン監修などの制作陣を紹介している。どうやらゲネプロを観た記者が記事を載せた模様。

さすがに日本語が分からない海外の方は観劇しようと思わなかったかも知れない。しかし、SNSにはチラホラ「行くぞ!」という声が。どうも日本旅行の目的の1つに数えられているようだ。

一方の日本人からは大感動の嵐が来ている。劇団四季の200字コメントにも「劇団四季で史上最高に好き」「愛するって尊い」「人生でナンバーワンの作品」など、高い人気を得ているようだ。すでに10回以上観劇した人もいて驚く。まあ、私もサウンドトラックは何十回も聞いているのだが。

社長の思いを知った後でこの結果を見ると…ちょっともったいないかな。これだけインバウンドの観光客がいるのに、観光客を劇場にもっと引きずり込めなかったのだろうか。上演中に英語の字幕を付けるべきだった

海外からの観光客がたくさんいる国ではすでに字幕翻訳を映し出す取り組みがなされている。たとえば2010年代には韓国ミュージカル『三銃士』では日本語の字幕があったと、観劇した友人から聞いている。

もし海外公演への意欲があるなら、劇団四季の皆様、名古屋と大阪では字幕をつけるのはいかがでしょう?ご提案させていただきます。「翻訳つけますよ~」の事前告知を多言語できちんとやれば、きっとインバウンド客の心を掴むはずです。

翻訳によってインバウンド客の感想や劇評をぜひ集めたい。これだけ日本の都市部に海外旅行客が押し寄せているのだから、劇場に引き寄せなければ機会損失と言ってもいい。その人気がやがて海外公演の実現に大きく寄与するはずである。

劇団四季の団員だったダンサーさんも高評価

国内外からの反応をご紹介する前半の最後はYouTube「うぴちゃんねる」での評価を。

この方は劇団四季の元団員で、7年間の在籍だった。現在はフリーのダンサーさんで、アフリカにバレエ学校を建てることが夢と自己紹介で語っている。

内部の人間から外部へ移り、現在もプロとしてご活躍される彼が真剣なまなざしで、嬉しそうに感想を語った。

原作漫画を読んで予習していった方がいい。漫画と違う内容の部分もあるが、事前に内容を知っていれば深く理解できる場面もある。

これは激しく同意!もちろんいきなり観てもいいが、きっと後で原作漫画を読みたくなる。で、読むときっとまたミュージカルを観たくなる。そうすると細かい演出やメッセージも読み取れ、新しく追加された登場人物や場面の効果もよく分かる。

テーマ選びに成功している。生きてるって当たり前じゃないんだと思える。劇団四季の作品に共通するテーマ「人生は素晴らしい、生きるに値する」という言葉に一番近い。観て良かった!

人生は生きるに値する…本当だ。フロー(フローレンス・ナイチンゲールの愛称)の生き様がまさに語ってくれる。

行動しろ。なんとかするのだ。話はそれからだ。

そして、たまには他人の負の影響を受けて弱音を吐くフローにむかい、迷ってんじゃねえとおケツをひっぱたいてくれるゴーストのグレイ。

絶望のどん底に落ちたことがありながらも、ハッピーエンドを迎えた2人。2人が育んだ愛の温かさが、ランプの灯火となって心にともる。

演出がいい、歌のレベルが全体的に高い

おおお!演出の良し悪しはプロしか語ることはできないので、私はなるべくむやみやたらに批判しないように気をつけてはいる。が、プロの彼が言うのだから間違いないだろう。

演出家のスコット・シュワルツはこちらの記事でご紹介したが、劇団四季の吉田社長のお墨付きだ。2016年に『ノートルダムの鐘』を上演した時の彼の演出が素晴らしかったから、2018年に話が持ち上がり、2019年には声を掛けた。

幸い、原作漫画の英語版があったので渡したところ、シュワルツ氏は漫画をイッキ読みしたうえ演出の仕事を快諾したという。

「ゴースト&レディ」を通して劇団四季が見つめる心の羅針盤

劇団四季の吉田智誉樹社長が語った、コロナ禍での辛い思い

フローがジョン・ホールと対決した時に熱唱した歌がある。

心の羅針盤を見つめて命を燃やす。選んだ一筋の道を生きるために。

ビジネス系のニュース動画で劇団四季の現社長・吉田智誉樹が語った作品への思いから、フローと同じくらい揺るぎない信念が感じられた。ぜひここで敬意をこめてご紹介したい。

そもそもブロードウェイやウェストエンドからの翻訳作品の上演が圧倒的多数だった劇団四季が、近年『バケモノの子』、『ゴースト&レディ』とオリジナル作品を立て続けに発表した。方向転換のきっかけは、やはりコロナ禍だった。

劇場関係のイベントの自粛を安倍政権から要請された日のことを、業界人は「令和の226事件」と呼んでいる。自分たちの仕事は不要不急と言われること。これほど悲しいことはなかった。

2020年には政府や自治体の要請で1000回以上の公演が中止。85億円の損失。飲食店と違い、舞台業界への補償はなかった。

劇場が特別、感染の温床になることはないのだ。全員が強制的にマスクをし、一方向を向き、黙って観劇している劇場。しかも換気量が法令により決められていたのだから、換気の必要性にも適っていた。

それなのに、収入をほぼゼロにすることが国によって要請された。映画館とパチンコはいいのに舞台の演劇とライブだけがこうなるってどういうこと?迫害だよね。

劇場が閉められた期間のことは思い出すのも辛いとのこと。そりゃそうだ。ファンも辛かった。関係者の皆様はどんなに涙を流したことか。

この状況がどのくらい続いたら劇団はつぶれるのか。長年の堅い経営のおかげで最低2年はもつが、やることがない俳優が心を病まないよう、オンラインでセミナーをするなどのケアがやっとだった。

2020年7月14日の創立記念でようやく舞台が再開。先輩たちが天国から「お前ら頑張れ、倒れちゃいけない」と声を掛けてくれた気がしたと吉田社長は語る。その経験が、いわばお尻に火をつけたと言ってもいいかもしれない。

オリジナル作品は劇団四季が生き残るためのブレイクスルー

吉田社長が浅利慶太から劇団四季の社長職を受け継いだ当時、オリジナル作品を新しく作るという取り組みが停滞していた。「今」の客が喜ぶ作品をもっと作るためにも、劇団が生き残る安全保障のためにも。

コロナのような危機が来たときだけではない。日本は間違いなく少子高齢化、人口減少に直面する。だが劇団四季の観客はほとんど日本人。しかもファンの年齢層の中心は、これから減ると言われる労働生産人口の世代。劇団四季は人口減少の影響をもろに受けるということだ。

日本国内で日本人向けのビジネスだけやっていると経営難に陥る時代が必ず来る。ということは、ビジネスを海外に広げていくしかないのだ

その救いの手が、オリジナル作品だ。

コロナ禍から急速に広まった配信公演は、海外作品だと権利的に許されない。グッズの開発や映像化などの権利もない。海外作品において劇団四季がもっているのは、上演権のみ。そんな海外の作品に依存するわけにはいかない。

でもオリジナル作品なら、配信もグッズ開発も独自でできる。海外に輸出したり映像化したり何かとコラボしたりできる。圧倒的に自由度が高い。つまり収入源にできる可能性が圧倒的に広がる。

日本はそもそもミュージカル輸入大国だった。今まで劇団四季の利益の9割弱が海外作品だった。その状況を脱却し、オリジナル作品と半分ずつにすることが目標になっている。

さらには海外へのビジネス展開として、もちろん、日本産の作品を輸出できるようにすべきだ。まず近場のアジアから。いずれはブロードウェイとウェストエンドにリベンジを。

これが吉田社長の語った、劇団四季が『ゴースト&レディ』をはじめとするオリジナル作品によって生き残っていく戦略である。

まさにブレイクスルーだ。ニュース動画のタイトルにもなっていたが、ディズニー作品が多かった劇団四季が、これほどまでに上質な素材、世界に通用する題材と人材を集め、オリジナル作品の発表に撃って出た。そして大成功している。

社長の思いを知ると、ファンとして嬉しさが倍増する。いまや大人気作品となったこの作品、本当に日本国内だけではもったいなさ過ぎる。

やっぱりミュージカル輸入大国としてのリベンジ戦は、グレイに観てもらいたい。そう!ウェストエンドのドルーリー・レーン劇場でやらなきゃね!

最後に

いかがでしたでしょうか?

今後、この作品は間違いなく大きく飛躍します。『千と千尋の神隠し』は日本人が日本語で上演してこそ価値のある作品でしたが、『ゴースト&レディ』はイギリスの物語なのだから、是非とも英語でイギリスの俳優さんによって上演してほしいですね。その日まで応援していきましょう!

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