「天使にラブ・ソングを」思い出深い日本版キャストをご紹介♪鳳蘭/大澄賢也/KENTARO/未来優希/朝夏まなと

ミュージカル『天使にラブ・ソングを』日本版キャストの魅力に迫るシリーズ第2弾!今回も濃ゆいメンツを語ります。個性豊かな歌声の方、この人がいなければ『天ラブ』はできなかっただろうと思える重鎮、心を込めてご紹介します。是非最後までお楽しみください!

『天使にラブ・ソングを』のレジェンド修道院長、鳳蘭

ミュージカルファンの仲間からこんな評価を耳にしたことがある。「修道院長様って、もっとソプラノとか裏声を操るクラシック系の歌い手で、色気のある感じじゃだめなのかなぁ」なるほどね~好みは人それぞれだからね~…

声を大にして言いたい。

ダメなのです。修道院長様はヘンな色気があってはならぬ。神様にお仕えする、堂々たる気品の老婦人でなければいけない。はい、「老」がついている貫禄だからこそいいのです。

元宝塚男役トップスター、鳳蘭さん。

この方は私たち観客からすると後光が差しているような、話しかけ難いような、観音様に見えることはないだろうか。美輪明宏さんとかイアン・マッケランとかと同じくらい尊い御大。映画版『天ラブ』で修道院長様を演じたマギー・スミスの印象にもピッタリである。

70代に入られてもなお、10年前の初演から全く変わらぬ安定した力強い歌声。細部まで緻密に計算された小芝居は、年々少しずつ変えて楽しませてくれる。

鳳さんの好きなシーンを3つ挙げてみたい。1つはデロリスに聖歌隊に入るよう話すとき。

「デロリス:彼女たち上手い?」
「院長様:…(3秒間固まり、うわずった声で)…こここ言葉にできません」。

これは初演から少しずつ変わってきた。実際、聖歌隊に入ってからデロリスが「どう?結構うまいでしょ?」と聞かれて同じセリフを言うのだが、この変化に合わせてデロリスのセリフ回しも変化していった。連係プレーばんざい♪

もう1つは第2幕の冒頭。懺悔室でデロリスと言い合っていたところにオハラ神父が乱入してくるところのリアクションが面白すぎる。

そして3つ目は院長様渾身の「I Haven’t Got A Prayer(主がおられない)」。特に歌い終わった直後の一人芝居が最高。

あれだけの長い時間を一人で張っているのに、まったく長ったらしい感じがしない。見よ、これがレジェンド鳳蘭だ。

カーティス大澄賢也はオモシロとネジ飛びと恐怖の大王

大澄賢也さん演じるマフィアのボス、カーティス。

どういう人なのかなと考えてきたが、上のタイトルに行きついた。派手好きでやり手のビジネスマンで、女をいっぱい囲っていそうな感じ。お金持ちの家に生まれたか、狡猾に成り上がってきたかのどちらかだと思っている。

ただ、愛人へのプレゼントが妻のお下がりだとバレないようにするのに、詰めが甘い(笑)。逆に人を殺すときやデロリスを追い詰めるとき、ふと声が低くなるのが怖い。

が、最終的に逮捕される時はブロードウェイ版やウェストエンド版のカーティスは見せないオモシロを見せてくれる。

ダンサーさんなので動きがシャープで、舞台からハケる(舞台上から袖に退場する)ときまでカッコよく踊っている。ボスの余裕っぷり。社会から外れて尖りまくったチンピラが頼りにしてきそうな、ブレない度胸がうかがえる。

大澄さんは初演メンバーかつ、いくつかの場面で振付もご担当。エディの大ナンバー「I Could Be That Guy(いつか、あいつになってやる)」と、デロリス涙のバラード「シスター・アクト(Sister Act)」である。

ダンスが苦手な石井さん演じるエディの曲で、大澄さんの振付はただカッコよく踊らせるだけでは済まない。内気で自信のないエディが不器用に踊るところを見せたいから、リズムに合っていないくらいがちょうどいいと言うのだ。

大澄さんの作るダンスはただのダンスではなく役なのだ。これがシアターダンスの神髄かぁ。

ズッコケマフィア3人組でいちばん優しい男、ジョーイ KENTARO

あのズッコケてるマフィア3人組の中で誰と友達になりたいかと言ったら、絶対ジョーイ(笑)。なんやかんや言って優しそうなんだもん。年老いたシスターが胸を押さえて「うっ」とか言えばちゃんと声を掛けるあたり、いい人だ。それで捕まっちゃうんだけどね。

その優しいマフィア、ジョーイを初演から演じているのがKENTAROさん。

とにかく声がいい。気持ちよく響く魅惑のバリトンで、冗談みたいなことばかりのたまう。シスターを口説き落とすイメトレをしているのに、色気よりツッコミどころ満載すぎるのが勝ってしまって客席の私は笑いが止まらない。

だって、体型を覆い隠すシスターの黒い修道服を「セクシーだよ 罪だぜ」なんて、着眼点が素敵じゃないか。そしてシスターが自分に陥落したと想定して、脱いだ自分のジャケットをシスターに見立てて抱き締めちゃう。おもしろくってたまんない。

KENTAROさんはこうやって歌の合間の演技で遊ぶところが細やかだ。冒頭でデロリスとカーティスが台詞を交わしている場面も、KENTAROさんを追っていると非常にキャラが立っていた。

カーティスが今にもデロリスを殴るかド突くかというところで、後ろから思わず「ボス、そこでブチ切れちゃだめだっ…!」と声を掛けようとハラハラしている。が、カーティスが不意を突いて「おいでハニー♡」と言うと安心して前のめりにコケる。ものすごく楽しそうだ。

ジョーイはカリビアンな黒いモジャモジャ頭が板についているが、KENTAROさんはカツラを脱ぐと一目見たら簡単には忘れられないスキンヘッド。

おっと、「一目見たら簡単には忘れられない」といえば、『レ・ミゼラブル』のジャベール警部。はい、KENTAROさんはジャベールも演じたことがある。

私は幸運にもKENTAROさん演じるジャベールも、その次の再演で華麗に変身したテナルディエも両方を拝見できたが、その豹変っぷりに度肝を抜かれた。演技者としても安心感抜群の存在なのだろう。

迫力の歌声でシスターたちのムードメーカー♪メアリー・パトリック未来優希

シスターの聖歌隊でもひときわ元気で声がデカくて目立つ存在がシスター・メアリー・パトリック。歴代で何人かが演じているが、私のイチ押しは元宝塚男役スターで今は肝っ玉母さんの未来優希さん。

宝塚時代から声の響きのデカさも演技の豊かさもピカイチだと思っていた。メアリー・パトリックはその技術だけでなく、未来さんのラテン気質な明るさが存分に生かされていた。

ミサで思いっきり歌えるようになった第2幕、デロリスに「私とっても楽しい!今朝、神に感謝しましたよ。あなたの訪れを」と嬉しそうにニコニコと言う場面があるが、未来さんの言い方があまりにも温かくて涙が出てきてしまった。

全然泣くところじゃないのに何してくれるねん!というくらいの不意打ちだった。

未来さんパトリックがその台詞の直前、ソロパートで美声を轟かせているのが「Sunday Morning Fever(サンデー・モーニング・フィーバー)」。深くて艶のある声なので、本当に休日の朝に聞いたら気持ちよくって元気になれそう。あの歌声、もう一度聞きたいなあ。

ちなみに曲はその名の通り『Saturday Night Fever』を日曜朝のミサでフィーバーしちゃおうぜ!というノリに変えた曲。映画の名曲のフレーズも使われているので分かる人には分かる。分からない人は予習すると10倍楽しい。

生けるミューズ!もう一人のデロリス朝夏まなと

最後の最後にご紹介するのが、我らがデロリスでも一番新しいデロリス朝夏まなとさん。元宝塚男役トップスターで、抜群のスタイルとパッチリ大きな眼と華やかさを持つ女神。

恐縮ながら、私はどうしても森公美子さんのデロリスがベストなので歌声を比べてしまうのだが、彼女がコロナ直前とコロナ後の3度にわたってデロリスを演じ、その3度とも1回ずつ彼女を見て驚愕した。

歌声がどんどん進化していった。

一番好きな歌「Sister Act(シスター・アクト)」の声の響きがどんどん感動的になっていった。やっぱり鍛え上げられていく人はいつも、こんなに経験豊富なプロのトップスターでさえ、成長を止めないのだなとつい思ってしまったくらいだ。

朝夏さんのデロリスは森さんと芯の部分は同じでも、動きのキレやスタイリッシュさの個性が際立つ。ブロードウェイやウェストエンドのデロリスと並んでもちっとも劣らないカッコよさ。

なにしろ太陽のような強くて明るく溌溂としたエネルギーに溢れていて、朝夏さんデロリスから発せられたキラキラした光を客席で浴びている気分になる。

私は朝夏さんデロリスを拝見すると必ず「私もデロリスみたいに美しくてポジティブオーラ全開な女性になりたい!」と思えてしまう(笑)。

そして儀式のように渋谷ヒカリエのお花屋さんで真っ赤なバラを買う。朝夏さんデロリスにそっくりの大きな深紅のバラが欲しくなるのだ。部屋に飾るとしばらく元気をキープできる。

終わりに

名作ミュージカル『天使にラブ・ソングを』日本キャストのご紹介を2回にわたってお届けしました。いかがでしたか?まだこのメンバーで再演してほしいという思いに賛同してくださる方!ぜひこれからも作品と俳優の皆様を共に応援しましょう!

『天使にラブ・ソングを』日本キャストをご紹介した記事の第1弾はこちらからどうぞ。

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